大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1559号 判決

被告人 金子鳳

〔抄 録〕

一、第一点について。

所論により記録を閲するに、本件起訴状記載の公訴事実第二には、被告人が康大益と共謀して昭和二八年二月上旬頃被告人方において単一の犯意発動の下に継続して本件覚せい剤約六、七〇〇立方糎を不法に製造した旨記載あるのに、原審第一二回公判期日に至り検察官より、右「昭和二八年二月上旬頃」とあるを「昭和二七年九月頃から昭和二八年二月上旬頃迄の間」と訴因の変更をなし度い旨請求あり、之に対し、原審弁護人からは、斯る変更は公訴事実の変更となるものにして違法なる旨の意見を述べたに拘らず、原審は右変更を許し而して原判決においては、その判示第二の被告人の犯罪事実として右変更された事実と同趣旨の認定をなしたこと所論のとおりである。

これにつき所論は、要するに、斯ように「昭和二七年九月頃より昭和二八年二月上旬頃迄の間」というが如き長期間単一犯意発動の事実ありとなすは、起訴当初の「昭和二八年二月上旬頃」というと甚しく内容を異にし公訴事実の同一性を欠き且つ犯行そのものが特定しないため被告人の防禦に困難を来すことになるから、かかる程度の変更をも訴因変更として許可することは違法なる旨主張するものである。

そこで按ずるに、右起訴当初の公訴事実と右訴因変更請求にかかる公訴事実との内容を比較すると、単に「昭和二八年二月上旬頃」が「昭和二七年九月頃から昭和二八年二月上旬頃の間」となつた点が相違するのみで、若干期間「単一且継続の犯意の下に」なされた犯行という点においては前後変りなく而して覚せい剤製造の如く相当の技能と時間とを要する性質の所為については、その犯行の完遂には若干の日数にわたり継続的単一犯意の発動たる所為あるを寧ろ自然の傾向とみるべきである。故に、右程度の公訴事実内容の変更を認容することは、本件犯行に関する手続としては己むを得ないところであり、之を以て直ちに公訴事実の同一性を害し又は被告人の防禦を不当に困難ならしめる性質の処置というは当らない。論旨は理由がない。

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